電力用コンデンサの取付け場所は第1図に示すように各種の方法があります。一般的に高圧受電の場合は、高圧側と低圧側、さらに一括と個別とがあり、それぞれ長所、短所があります。第1表にその比較を示します。
施設費が安く、電気料金の力率割引を受けることを主目的とする場合は受電点設置の方式が有利で、一番多く採用されるケースです。変圧器の負荷軽減並びに損失を低減することに重点を置く場合は変圧器の二次側接続が効果的ですが、この場合は設備コストが高くなります。
また、設置にあたり留意すべき事項として、不適切な場所を例示しますと、次の通りです。
① 湿気、結露の多い場所
② 水気のある場所
③ 周囲温度が40℃を超える場所
④ 鉄粉や塵埃が多い場所
⑤ 腐食性ガスのある場所
⑥ 振動の有る場所
力率改善に必要な電力コンデンサ容量は第2図に示すベクトル図から、次式により求められます。
力率改善に必要な電力用コンデンサの容量Q[kVar]は、
ただし、 W :有効電力[kW]
cosφ1:改善前の力率
cosφ2:改善後の力率
通常は、これを図表化した第3図により、簡便に所要容量を求めることができます。
改善後の力率は95%位までにするのが効果的とされ、高圧側に設ける場合は変圧器容量の1/3位にする場合が多いようです。
電力用コンデンサを使用する場合、機器が損壊したり、外の機器に影響を及ぼすことがありますので、その原因並びに対応について簡単に説明します。
(1)軽負荷時の電圧上昇
夜間や休日など負荷が軽くなつた場合、電力コンデンサが作用し回路が進み力率になると、線路のリアクタンスによって負荷端の電圧が上昇することがあります。電圧が上昇すると運転使用中の機器に悪影響を及ぼしたり、コンデンサ自身も過電流が流れ好ましくないので、定格電圧の110%を超えないように運用をすることが必要です。
(2)自己励磁現象
誘導電動機と並列にコンデンサを接続して運転するのが、もっとも効果的な使用法ですが、電動機を電源から切り離した場合、電動機に電力用コンデンサから電流が流入し、励磁作用を行い発電機となって異常電圧を発生することがあります。
これを防止するには、少なくとも誘導電動機の励磁電流以下の容量にする必要があります。
(3)直列リアクトルによる端子電圧の上昇
高圧コンデンサには直列リアクトルを取り付けるように規定が改正されております。リアクトルを接続すると、コンデンサの端子電圧は上昇するので、それに対応した定格電圧のコンデンサを使用する必要があります。
既設のコンデンサにリアクトルを追加接続するようなことは危険となる場合がありますので注意が必要です。
(4)過電流
最近はサイリスタを応用した機器が普及してきましたがしたが、これらの機器は、波形をひずませ、高調波発生源となります。
電力用コンデンサは波形ひずみを増大させる性質があり、その結果、流入電流が増大し、温度上昇が激しくなり、損壊事故を発生させる要因となるような場合があります。
また、軽負荷時は電圧上昇によって、変圧器の鉄心が飽和して高調波分が増大し悪影響を及ぼすこともありますので、注意をする必要があります。
(5)損壊防止対策
電力用コンデンサは常時全負荷で連続使用し、場合によっては高調波障害により、異常電流が流れ機器損壊を招く場合があります。
万が一内部短絡となると、電流を抑制する要素が少ないのでケースが破損するような事故に発展する場合があります。
そこで、万一故障を起こした場合は初期の段階で電路より切り離し、事故拡大の防止を図る必要があり、次のような方策が行われる場合があります。
① 即断性のある電力ヒューズにより保護
② Y接続として万一素子が破壊しても大きな短絡電流とならないようにして遮断器を開放
③ Y接続として中性点電位の移動をとらえて開閉器を開放
④ ケ-スの膨張を捕らえて異常時電源を開放
等であります。