先ず、基本的な事項として、周波数が変化した場合に問題となるのは、
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①誘導電動機の回転数が周波数に比例して変化するということです。
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②また、供給電圧を変えないで周波数を変えると機器の磁束を作るための励磁電流が変化し問題となる場合があります。
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③次に、回路のインピ−ダンスが変化する
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④これら①から③が、どのように影響するか
が問題ということになります。
ここでは一般的に数多く使用されている三相誘導電動機について説明します。先にふれたように、電動機の回転数Nは周波数fに比例し、次式で示されます。
ただし、P:極数、f:周波数[Hz]、s:すべり
回転数が変化すると、摩擦負荷の場合は出力は回転数に比例しますが、ポンプやブロアのような流体機器では出力が回転数の3乗に比例するので問題となることがあります。
供給電圧V、コイルの巻数n、周波数fとの関係は、次の(2)式となります。
ただし、K:定数、n:巻数、f:周波数[Hz]、Φ:磁束[Wb]
ここでの問題は、電圧が変わらないで周波数だけが変化(減少)しますと、(2)式からわかるように、周波数に逆比例して磁束が変化(増加)し、大きな励磁電流が流れます。励磁電流が増大すると負荷力率が低下します。そこで、50・60Hz共用の電動機では、供給電圧を変えて運用することが行われています。
第1表は、供給電圧と周波数の変化が電動機特性にどのように影響するかをまとめたものです。なお、同表は負荷出力が変化しないとした場合の特性です。先ほど述べたように、流体機器の場合は周波数が変わると出力は回転数(周波数)の3乗に比例するので、特性が大幅に変化するので注意が必要です。
小容量や特殊な場合を除いて、50Hz,60Hz共用使用で設計・製作されるものは少なく、専用の変圧器が使用されています。ここでは、60Hz仕様の変圧器を仮に50Hz地区で使用したらどうなるかを考えてみましよう。
一番問題となるのは励磁電流です。(2)式に示すように給与電圧が同一で周波数が低下した場合には、磁束は増加します。この結果、鉄心が磁気飽和し、大きな励磁電流が流れ、内部リアクタンス並びにインピ−ダンスは減少し、損失、温度上昇等の特性が変化します。特性変化の事例を第2表に示します。
逆に50Hz仕様のものを60Hzで使用する場合は、励磁電流が減少し使用できないことはありませんが、内部インピ−ダンスは周波数に比例し増大するので、電圧降下と電圧変動が増大することに対する配慮が必要であります。
コンデンサに流れる電流は供給周波数に比例し増加します。JIS規格には周波数変動に対する許容値は記載されていませんが50Hzと60Hz共用規格もあり、供給電圧や高調波の影響も受けるので、最高許容電圧と許容時間という形で、次のように集約されている。したがって、コンデンサについては定格値の範囲内であれば、運用上問題はないと考えてよいでしょう。
1. 1.10倍の電圧が24時間のうち12時間以内
2. 1.15倍の電圧が24時間のうち30分以内
3. 1.20倍の電圧が1か月のうち5分以内が2回以下
4. 1.30倍の電圧が1か月のうち1分以内が2回以下
家電用の機器は、電動力を利用したもの、電熱を利用したもの、電波を利用したもの、これらを複合したもの等が数多く使用され、共用品には50/60Hzの表示があり、全国どこでも使用できます。第3表に使用の可否、問題点の一覧表を示します。次に示す基本的事項を理解した上で、運用していただきたいと思います。
◎電熱を利用したものは、周波数には関係なく使用できます。
◎電動力を利用したものは回転数が変化し、能力が変わり支障を来す場合もあります。
電力系統では発電電力と負荷消費電力がバランスして系統の周波数が保たれています。大出力の発電所では負荷予測にもとづき大まかな電力調整を行い、微調整はダム式の発電所等出力調整が容易な発電所で実施しています。電力系統にて、万一事故が発生した場合等、発電と負荷にアンバランスが生じると周波数変動がおこります。
周波数が変動した場合に問題となるのは、繊維産業では回転数むらの問題があり、大容量発電設備での回転数変動で異常振動が発生し主機に危害を及ぼす恐れが生じたり、ポンプ、ブロア等の補機出力が変動し給水や給油系統の流量や圧力が変動して運転継続が困難となる場合もあります。
系統容量の増大化に伴い周波数変動の許容値は縮少傾向にあって0.2Hzが限度ということで運用しています。