配電線や受電設備の構内に広く採用されている6kV配電系統では系統の中性点が非接地のため、地絡電流が小さく、負荷電流と区別が困難である。また、地絡故障の際の線間電圧の変動はほとんどない。このため短絡故障のように過電流継電器やヒューズによって故障点を検出、除去することはできない。本講では、6kV非接地式配電系統における地絡故障の検出方法と保護継電方式について解説する。
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配電線や受電設備の構内に広く採用されている6kV配電系統では系統の中性点が非接地のため、地絡電流が小さく、負荷電流と区別が困難である。また、地絡故障の際の線間電圧の変動はほとんどない。このため短絡故障のように過電流継電器やヒューズによって故障点を検出、除去することはできない。
まず地絡故障発生の検出であるが、各相大地間にVTを接続し、その電圧降下によって地絡相を判別する方法があるが、短絡故障時にも電圧は降下する。
このため、6kV配電系統では独特の工夫がされている。
1線地絡時には第1図のように健全相の対地電圧は線間電圧まで上昇する。
このことを利用した地絡故障の検出手段として、各相大地間に接続したVTの二次側を開放△結線として、その開放端子に現れる電圧を取り出すことが一般に行われている。
この場合、完全地絡故障時には地絡層の対地電圧はゼロになり、健全相の対地電圧は瞬間的な過渡状態を経て線間電圧に上昇し
倍になる。このとき二次側開放端子には地絡故障前の対地電圧の3倍に比例した電圧が現れる(第2図)。
中性点の対地電圧を零相電圧といい、常時はゼロで地絡故障時などに発生する。
この電圧の地絡電流に対する位相関係はどの相の地絡時でも、同様であるので、これを取り出して保護継電器の基準電圧や記録装置に使用している。
また、開放端子には一次換算で10kΩ程度の制限抵抗が接続されることが多い。
このためVTの変圧比が6,600/110Vの場合25Ωの抵抗が普通接続される。これは
一次側中性点と大地の間に10kΩの抵抗を接続したのと等価になる。
この装置は普通VTを三相形とし、接地変圧器(GVT)と呼ばれ、配電用変電所など6kV系統の電源母線に接続される。一般の配電線から受電する受電設備の地絡検出用として、この接地変圧器を設置すると系統の対地インピーダンスが小さくなり、かつ中性点多重接地になって保護継電方式にも影響し、地絡時の故障点の探索も困難になるため使用しない。
このためこのような受電設備で零相電圧が必要な場合には、コンデンサ分圧による零相電圧の取出しが採用されている。
これはコンデンサ形零相電圧検出装置(ZPD)と呼ばれ、各相の対地電圧を合成して零相電圧を検出する(第3図) 。
零相電圧は地絡時に電源変圧器の二次側の系統全体に発生するので、故障発生を検知することはできても故障箇所の判定はできない。
零相電圧だけを利用した地絡過電圧継電器(OVGR)は主として地絡発生の警報あるいは後備保護用として使用されている。
地絡故障箇所の検出遮断には地絡電流を利用した地絡過電流継電器(OCGR)が使用されている。地絡電流の検出には各相に設置した変流器(CT)の残留回路から取り出す方法などがあるが、6kV配電系統は地絡電流が小さいので、これを正確に検出するため、零相変流器(ZCT)が使用される。
これは一次側巻線を三相導体としたもので、常時あるいは短絡故障時には各相電流のベクトル和はゼロで、二次側に電流は流れない(第4図)。また、一次側がケーブルの場合には一次絶縁が省略できる利点もある。しかし、この場合にはケーブルシースに流れる電流の影響を打ち消すため、ケーブルヘッドの接地線は零相変流器の中を通さなければならない。
受電設備では受電端に、この零相変流器を利用した地絡過電流継電器を設置して構内の地絡故障の検出遮断手段としている。
しかし、地絡故障電流の大部分は零相充電電流であり、地絡電流は系統全体の対地静電容量を通って電源側へ還流する(第5図) 。
このため受電設備の零相変流器一次側には保護責務区間以外の場所で発生した地絡故障時にも設置箇所より負荷側の対地静電容量を通じて地絡電流の分流分が流れる。
したがって、構内に電力ケーブルを使用して配電している受電設備では系統のどこかで地絡故障が発生すると、電力ケーブルの静電容量による地絡電流が分流するため、地絡過電流継電器の整定に注意を要する。
このような場合、継電器の感度を鋭敏に保ちながら構内の故障だけに動作する保護継電器として地絡方向継電器(DGR)が使用される。
動作原理は電力計と同様で、零相電圧と零相電流の相乗で動作し、零相電流の向きが制定方向と逆になれば制動力として働く。配電用変電所のように同一母線から多数の線路が引き出されている場合は故障線路の判別遮断のためにも使用される。