二次電池は充電をすることによって繰り返し使うことができる電池である。自家用電気設備の二次電池としては鉛蓄電池とアルカリ蓄電池が主として用いられている。ここでは、二次電池の第二弾として、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン二次電池について解説する。
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ニッケルカドミウム電池は大出力放電が可能であり、サイクル特性が良く、過充放電に強いという特徴を備えている。
(1)原 理
ニッケルカドミウム電池はニッケル酸化物を正極に、カドミウム化合物をごく薄くシート状にした電極を負極とし、これらの電極における化学変化を利用した充放電可能な二次電池である。この電池の放電反応式を以下に示す(充電は右側から左側への反応)。
(2)構 造
ニッケルカドミウム電池を正極の構造で分類すると、焼結式と発泡メタル式とに分けることができる。前者はニッケル粉末の焼結基板に水酸化ニッケルを充填した電極構成であり、後者は高多孔度の発泡ニッケル基板に水酸化ニッケルを充填した電極構成をとっている。
焼結式は大出力放電特性、サイクル特性、経済性に優れている。このため電動工具や玩具などのような瞬間的に大電流を必要とする用途に適した電池である。一方、発泡メタル式は焼結式に比べてエネルギー密度が高く(約160Wh/l
)、携帯用電子機器、各種事務機器、音響機器などの電源として用いられている。
ニッケルカドミウム電池は、正極と負極との間にポリプロピレンなどを用いたセパレータと呼ばれる薄い不織布が挟み込まれて、これら3層から成る構造体を捲回したスパイラル構造をとっている(第1図)。また、この電池の電解液には強アルカリの水酸化カリウム(KOH)などが用いられている。
(3)特 性
(a)充電特性
ニッケルカドミウム電池は第2図に示すように、充電の進行に伴って電池電圧が上昇するが、電池の発熱によって平衡状態となる。また、電池温度の上昇は電池の周囲温度が低いほど顕著に現れる。また、電池の周囲温度が高くなるほど充電効率は低下する。
なお、ニッケルカドミウム電池の公称起電力は1.2Vである。
(b)放電特性
この電池は第3図に示すように放電当初の電圧低下が見られるが、その後、ほぼ一定の電圧を維持する。そして放電終期になると電圧が急激に低下する。また、放電電流が大きくなるほど電池容量が低下する特性がある。
(c)温度特性
ニッケルカドミウム電池は第4図に示すように、電池の周囲温度が常温付近のとき電池容量が最も大きく、低温または高温のとき電池容量が減少する特性を示す。
(4)特 徴
ニッケルカドミウム電池の特徴を列挙すると次のようになる。
① 大電流放電・過充放電での耐久性が高い。
② 密閉構造であるため、堅牢であり、振動や衝撃に強い。
③ 保守が容易で湿度による影響も受けない。
④ 放電効率は放電電流と周囲温度の影響を受ける。
・放電電流大 → 電池容量減少
・周囲温度低 → 電池容量減少
ニッケル水素電池はニッケルカドミウム電池に比べて単位質量当たりの電池容量が大きいという特徴がある。
(1)原 理
ニッケル水素電池は負極に水素を含んだ水素吸蔵合金を用いた二次電池である。この電池の放電反応式を以下に示す(充電は右側から左側への反応)。
(2)構 造
ニッケル水素電池はニッケルカドミウム電池と類似の構造をしており、正極にはニッケル酸化物を、負極には水素吸蔵合金をそれぞれごく薄くシート状にした電極が用いられる。正極と負極の間には、ポリプロピレンなどの薄い不織布がセパレータとして挟み込まれており、これらを捲回したスパイラル構造をとっている。また、電解液はイオン導電性に優れた水酸化カリウムなどが用いられる。
(3)特 性
(a)充電特性
この電池は第5図に示すように、充電の進行に伴って電池電圧が徐々に上昇する。そして充電終期に顕著な電圧上昇及び低下がみられる。また、電池の周囲温度が高くなるほど充電効率は低下する。
なお、ニッケル水素電池の公称起電力はニッケルカドミウム電池と同じ1.2Vである。
(b)放電特性
ニッケル水素電池は第3図に示すニッケルカドミウム電池の放電特性と同様に放電当初の電圧低下がみられるが、その後、ほぼ一定の電圧を維持する。そして放電終期になると電圧が急激に低下する。また、放電電流が大きくなるほど電池容量が低下する。
(c)温度特性
第4図に示すニッケルカドミウム電池の温度特性と同様に、ニッケル水素電池は電池の周囲温度が常温付近のとき電池容量が最も大きく、低温または高温のとき電池容量が減少する特性がある。
(4)特 徴
ニッケル水素電池の特徴を列挙すると以下に示すようになる。
① 電池容量がニッケルカドミウム電池に比べてエネルギー密度が約2〜2.5倍と高い。
② 放電効率はニッケルカドミウム電池と同様に放電電流と周囲温度の影響を受ける。
この電池の電池容量は100〜7,000mAh程度の電池が製造されており、ノートパソコン、シェーバ、コードレス電話機、無線機、電動工具の電源として用いられている。
リチウムイオン二次電池はニッケル水素電池に比べて約2倍のエネルギー密度をもっているという特徴がある。
(1)原 理
リチウムイオン二次電池は第6図に示すように正極(リチウム化合物)と負極(炭素化合物)との間をリチウムイオン(Li+)が電解液中を移動することで充放電を行う。つまり、充電時には正極のリチウムイオンが電解液中を移動して負極が電源から電子を受け取る。一方、放電時は負極から電子を放出する(負荷に電流が流れる)と同時に電解液中をリチウムイオンが移動して正極に到達する。すると正極は元のリチウム化合物に戻る。
リチウムイオン二次電池は、このように充放電のときにリチウムイオンが移動することで電子の受け渡しを行う方式をとっている。このためロッキングチェア形またはシャトルコック形と呼ばれる。これはイオンが揺り椅子やバトミントンのシャトルコックのように互い違いに移動することに由来している。つまりリチウムイオン二次電池は充放電に際してイオンが正極と負極間を移動するだけである。このため充放電の繰返し回数が多く取れるとともに、高いサイクル特性を得ることができる。
リチウムイオン二次電池の放電反応式を以下に示す。
(2)構 造
リチウムイオン二次電池は正極にコバルト酸リチウムを、負極に特殊カーボンを薄くシート状にした電極を用いている。そしてこの正極と負極との間に極薄いシート状のセパレータを挟み込み、これら3層から成る構造体を捲回してケースに収納した構造をとっている。また、この電池は電池単体の電圧が3.7Vと高く、このため電解液に水酸化物質を用いると電気分解してしまう。このため電解液には有機溶媒が用いられる。
(3)特 性
(a)充電特性
リチウムイオン二次電池の充電方法は充電初期に定電流充電を行い、その後、一定の電圧に到達したところで定電圧充電に切り換える。このような充電方法は電池の劣化を防止する目的で行われる。
この電池の充電特性は第7図に示すように、定電流充電時に電池電圧が徐々に上昇して、所定の電圧に到達したところで定電圧充電に切り換える方式をとっている。このため定電圧充電になると充電電流が徐々に減少する。そして所定の充電電流値以下になったところで満充電とする。
ちなみに定電流充電中の充電容量は、時間の経過に比例して増加する。そして定電圧充電に切り換わった時点から充電電流が減少するため、充電容量の増加が頭打ちになる。
(b)放電特性
リチウムイオン二次電池は第3図に示すニッケルカドミウム電池の放電特性と同様に放電当初の電圧低下がみられるが、その後、ほぼ一定の電圧を維持する。そして放電終期になると電圧が急激に低下する。また、放電電流が大きくなるほど電池容量が低下する。
(c)温度特性
電池の周囲温度が常温付近のとき電池容量が最も大きく、低温のとき電池容量が減少する特性がある。
(4)特 徴
リチウムイオン二次電池の特徴を列挙すると以下に示すようになる。
① 1本当たりの電圧が3.7Vと高い。
② エネルギー密度がほかの二次電池に比べて高い。
・体積エネルギー密度 300〜400Wh/l
・重量エネルギー密度 120〜160Wh/kg
③ 自己放電が小さい。
・10%/月以下とニッケルカドミウム電池やニッケル水素電池に比べて約1/2である。
④ 電解液に有機溶媒を使用しているため内部抵抗がやや高くなる傾向がある。
この電池の電池容量は400〜2,000mAh程度の電池が製造されており、携帯電話、ノート形パソコン、コードレス電話機、無線機の電源として用いられている。