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(1) 風力エネルギー
風は空気の流れであり、風のもつエネルギーは運動エネルギーである。質量m、速度Vの物質の運動エネルギーは1/2mV2である。いま、受風面積A〔m2〕の風車を考えると、この面積を単位時間当たり通過する風速V〔m/s〕の風のエネルギー(風力パワー)P〔W〕は空気密度をρ〔kg/m3〕とすると、次式で表される。
すなわち、風力エネルギーは受風面積に比例し、風速の3乗に比例する。
単位面積当たりの風力エネルギーを風力エネルギー密度といい、
になる。空気密度ρは日本の平地(1気圧、気温15℃)で、平均値1.225kg/m3である。この値を使用して計算した風力エネルギー密度を第1図に示す。
風速が2倍になれば、風力エネルギーは8倍になる。したがって、風力エネルギーを活用するうえでは、少しでも風の強い場所、風況の良い場所を選ぶことが重要である。
(2) 風況
全国風況マップは風力発電の推進を目的として、種々の風況観測データをもとに地図上に風速階級を示したものであり、風力開発の進んでいる各国で作成され、有望地域の選定に用いられている。我が国の全国風況マップは新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)によって1993年に作成された。
(3) 風車の効率
風車から取り出すことができるパワーは、風力エネルギーに出力係数(パワー係数)Cpを乗じた値となる。出力係数は理論的に最大60%(Betzの理論)である。
実際の風車の出力係数は空気の抵抗や粘性による損失のため理論値には達せず、第3図に示すように風車の種類によって異なる。プロペラ形の場合で最大45%程度である。
風力発電システムにおいては更にギアなどの機械系伝達効率(95%程度)や発電機の効率(90%程度)などが加味され、風力エネルギーを電気エネルギーに変換する総合効率はこれらの積となり20〜40%程度である。
(1) 風車の種類
風車は風車回転軸によって水平軸形と垂直軸形に大別される。第1表に風車の分類を示す。
現在風力発電用として多く用いられている風車は、風による揚力で高速回転するプロペラ風車とダリウス風車である。
プロペラ風車はロータ(羽根車)の回転軸が水平である水平軸風車の一つで、現在の実用機の大部分を占めている。プロペラ形風車には、ロータの回転面がタワーの風上側に位置するアップウインド方式と、風下側に位置するダウンウインド方式がある。アップウインド方式は、ロータがタワーの風上側になるのでタワーによる風の乱れの影響を受けない。
一方、ダウンウインドー方式はプロペラを風向に合わせるためのヨー駆動装置が不要であるという特徴をもっている。
ダリウス形風車は垂直軸形風車の一つである。風向きに依存しないので方位制御が不要であること、発電機などを地上部に設置できるので点検や修理が容易であるという利点があるが、自力で始動できないので始動装置が必要である。
(1) 運転特性
風力発電システムは一定風速以上になると発電を開始し、出力が発電機の定格出力に達する風速以上ではピッチ制御あるいはストール制御による出力制御を行い、更に風速が大きくなると危険防止のためロータの回転を止めて発電を停止する。第5図はこの運転特性例を示したものであり、性能曲線あるいは出力カーブ(パワーカーブ)と呼ばれ、風力発電システムの性能を示すものである。おのおのの風速をカットイン風速、定格風速、カットアウト風速と呼ぶ。これらの風速値は機種によって異なるが、一般に以下のような値が採用されている。
カットイン風速:3〜5m/s
定格風速:8〜16m/s(定格出力に依存)
カットアウト風速:24〜25m/s
(2) 運転制御
風車の制御にはピッチ制御とヨー制御がある。
ヨー制御はロータに相対する風向きを検出して、ロータの方向を風向きに追従させるもので、油圧あるいは電動モータによるヨー駆動装置を用いて制御を行う。
ピッチ制御は風速・発電機出力を検出して、ブレードの取付け角(ピッチ角)を変化させることによって出力を定格値に制御する。
また、台風などによる強風時にはピッチ角を風向きに並行(フェーザー状態:Feathering)にし、ロータを安全停止させる安全・制動装置としての機能ももつ。
風車の速度制御として、そのほかにストール(失速)制御がある。
ストール制御ではピッチ角は固定とし、風速が一定以上になるとブレード形状の空気特性によって失速現象が起こり、出力が低下することを利用した制御である。ストール制御は翼特性を利用しているため、ピッチ角制御と違い稼働部が不要なので、構造がシンプルになり低コストである。
上記は発電機の回転数を一定に保つための対策であるが、最近では制御技術の発達と新しい発電機の開発によって、ロータの回転数変化に対応した可変速運転技術を用いて系統周波数へ変換する方法も使用されている(二次励磁制御)。
(3) システムの構成
第6図に示すように風車本体と系統連系設備で構成される。
風車本体は風力エネルギーを回転エネルギーに変換する翼(ブレード)、ナセル、タワーから成る。ナセル内部には増速歯車装置、運転制御設備、発電設備が備えられている。また、系統連系設備を通して電力系統に連系される。以下に各部について説明を加える。
風車本体
ブレードは発生する揚力を利用して風車に流入する風速の数倍のスピードで回転し風のエネルギーを取り込む。ブレードの枚数は通常3枚が用いられている。材質は軽量で耐久性が良いことが要求され、主としてガラス繊維強化プラスチックが用いられている。
ロータの回転数はその直径にもよるが毎分数十回転程度であり、一方、発電システムで用いられる交流発電機の回転数は一般に毎分1,500ないし1,800回転である。両者の回転数を整合させるため、増速歯車(ギア)装置を用いて回転数の増速を行う。
交流発電機のタイプとして誘導発電機と同期発電機の2種類がある。誘導発電機は出力変動による電圧変動の問題があるが、構造が簡単で低コストであり、広く用いられている。同期発電機は電圧制御が可能なため、系統への影響がなく、また独立運転も可能であるという特徴がある。誘導発電機に比べコスト増の傾向があるが、実用機の中で採用されるケースが増えてきている。
交流発電機の極数は一般に4極が用いられるが、6極と4極の極数変換方式を採用し、ロータ回転速度を低速/高速運転の2段切り替えとすることにより、カットイン(始動)風速を下げるとともに、低風速域でのブレード騒音を低減することを可能とした方式の採用が多くなっている。
系統連系設備
風力発電システムと商用電源との系統連系としては、トランス(変圧器)だけを介して直接系統に接続する交流リンク方式と、コンバータ・インバータなどから構成される電力変換装置を用いる直流リンク方式がある。
交流リンク方式では発電機の回転数が系統周波数の関係から一定となるためロータの回転数も一定の運転になる。
これに対し直流リンク方式では、可変速運転方式によってロータの回転速度を風の強さに応じて最適に設定することが可能で高効率発電になる。コスト増になるが、品質の高い電力で連系できる。また、騒音源となる歯車がないため、騒音の低い風車でもある。
そのほかに分散電源として、系統の保安及び電力品質確保に関する諸規定を満たすための系統安定化装置や単独運転検出装置などが設置される。
- 「風力発電導入ガイドブック」、新エネルギー・産業技術総合開発機構