~終わり~
■ぜひアンケートにご協力下さい■
なお、既存講座(理論)「三相交流回路1~対称三相交流の相順~」では、相順abcの三相平衡回路において誤接続した場合や、相順acbの場合の二電力計法での電力の測定について解説している。また、(電気数学)「加法定理による三角関数の和・差・積の公式」では、加法定理を応用してΔ結線電源の場合のブロンデルの定理の証明を行っている。(理論)「理論計算の落とし穴(5)複素電力による有効電力・無効電力の計算」では、電圧ベクトルと電流ベクトルの共役複素数との積で複素電力を求めることができることを示している。
1. ブロンデルの定理
電力の測定法に係るブロンデルの定理を下に示す。
『一般にn線式回路の電力は、平衡、不平衡によらず(n-1)個の電力計で測定でき、各電力計の指示値の代数和で求めることができる。』
これより、三相3線式では2個の電力計、三相4線式では3個の電力計が必要になる。
この定理には、重要な前提条件として、「任意の一線を基準相とした(n-1)個の電力計」がある。第1図は、この条件を考慮して電力計を接続している。
第1図において、(b)のベクトル図における測定電圧、電流の位相関係を用いると、Ea=Eb=Ec=E、Ia=Ib=Ic=I として、
W1=Vba Ib cos(30°−θ)=√3 Eb Ib cos(30°−θ)=√3 EI cos(30°−θ) [W]
W2=Vca Ic cos(30°+θ)=√3 Ec Ic cos(30°+θ)=√3 EI cos(30°+θ) [W]
したがって、P=W1+W2=√3 EI cos(30°−θ)+√3 EI cos(30°+θ)=3EI cosθ [W]
となり、三相電力を測定することができる。
一方、上記の前提条件を考慮せず、誤って電力計を接続した第2図においては、
W1=Vba Ib cos(30°−θ)=√3 Eb Ib cos(30°−θ)=√3 EI cos(30°−θ) [W]
W2=Vcb Ic cos(30°−θ)=√3 Ec Ic cos(30°−θ)=√3 EI cos(30°−θ) [W]
したがって、P=W1+W2=2√3 EI cos(30°−θ)=3EI cosθ+√3 EI sinθ [W]
となるが、三相電力を正確には測定できないと言える。
第1図 ブロンデルの定理の正しい接続 (a)
第1図 ブロンデルの定理の正しい接続 (b)
第2図 ブロンデルの定理の誤った接続 (a)
第2図 ブロンデルの定理の誤った接続 (b)
ブロンデルの定理を不平衡回路について証明すると次の通りである。
【証明】 第3図に示すように、n相の負荷にn相の電源から電力が供給されているとする。各相の負荷中性点に対する電位、すなわち相電圧を \(\dot{E}_1\)、\(\dot{E}_2\)、\(\dot{E}_3\)、⋯、\(\dot{E}_n\) とし、線電流を \(\dot{I}_1\)、\(\dot{I}_2\)、\(\dot{I}_3\)、⋯、\(\dot{I}_n\)、すなわち線電流の共役複素数を \(\bar{I}_1\)、\(\bar{I}_2\)、\(\bar{I}_3\)、⋯、\(\bar{I}_n\) とすれば、負荷に供給される複素電力 \(\dot{K}\) は、遅れ無効電力を正として、
\(\dot{K}=\dot{E}_1 \bar{I}_1+\dot{E}_2 \bar{I}_2+\dot{E}_3 \bar{I}_3+\cdots+\dot{E}_n \bar{I}_n\) …①
負荷の中性点は非接地なので、
\(\bar{I}_1+\bar{I}_2+\bar{I}_3+\cdots+\bar{I}_n=0\) …②
したがって、任意の第i相(i=1,2,3,⋯,n)を基準相に取れば、
\(\bar{I}_i=-(\bar{I}_1+\bar{I}_2+\cdots+\bar{I}_{i-1}+\bar{I}_{i+1}+\cdots+\bar{I}_n)\) の関係が成り立ち、①式は、
\(\dot{K}=\dot{E}_1 \bar{I}_1+\dot{E}_2 \bar{I}_2+\cdots+\dot{E}_{i-1} \bar{I}_{i-1}\) \(-\dot{E}_i (\bar{I}_1+\bar{I}_2+\cdots+\bar{I}_{i-1}+\bar{I}_{i+1}+\cdots+\bar{I}_n)\) \(+\dot{E}_{i+1} \bar{I}_{i+1}+\cdots+\dot{E}_n \bar{I}_n\)
=\((\dot{E}_1-\dot{E}_i) \bar{I}_1+(\dot{E}_2-\dot{E}_i) \bar{I}_2+\cdots\) \(+(\dot{E}_{i-1}-\dot{E}_i) \bar{I}_{i-1}+(\dot{E}_{i+1}-\dot{E}_i) \bar{I}_{i+1}\)
\(+\cdots+(\dot{E}_n-\dot{E}_i)\bar{I}_n\)
=\(\dot{V}_{1i} \bar{I}_1+\dot{V}_{2i} \bar{I}_2+\cdots+\dot{V}_{i-1,i} \bar{I}_{i-1}\) \(+\dot{V}_{i+1,i} \bar{I}_{i+1}+\cdots+\dot{V}_{ni} \bar{I}_n\) …③
③式より、任意の基準とする第i相(i=1,2,3,⋯,n)と他の各相との間の線間電圧と、その相の電流とによる電力の総和が負荷に供給される電力になる。すなわち、n本の線で供給されている電力は、(n−1)個の単相電力計で測定することができる。
第3図
先に示した第1図の例では、a相を基準相に選び、電力計W1はba間の線間電圧 \(\dot{V}_{ba}\) とb相電流 \(\dot{I}_b\)、電力計W2はca間の線間電圧 \(\dot{V}_{ca}\) とc相電流 \(\dot{I}_c\) を入力とすることで、2つの電力計の測定電力W1とW2の和で三相電力が測定できている。一方、第2図の例では、電力計W1の基準相はa相、W2の基準相はb相と相違しており、測定電力W1とW2の和で三相電力の測定はできていないことが解る。
なお、三相4線式のように、n相回路において電源側、負荷側の中性点を接地したり、中性線を設けたりするn相(n+1)線式回路の場合には、
\(\bar{I}_1+\bar{I}_2+\bar{I}_3+\cdots+\bar{I}_n+\bar{I}_N=0\) (\(\bar{I}_N\) は中性線電流)…②'
したがって、任意の第i相(i=1,2,3,⋯,n)を基準相に取れば、
\(\bar{I}_i=-(\bar{I}_1+\bar{I}_2+\cdots+\bar{I}_{i-1}+\bar{I}_{i+1}+\cdots+\bar{I}_n+\bar{I}_N)\) の関係が成り立ち、①式は、
\(\dot{K}=\dot{E}_1 \bar{I}_1+\dot{E}_2 \bar{I}_2+\cdots+\dot{E}_{i-1} \bar{I}_{i-1}\) \(-\dot{E}_i (\bar{I}_1+\bar{I}_2+\cdots+\bar{I}_{i-1}+\bar{I}_{i+1}+\cdots+\bar{I}_n+\bar{I}_N)\) \(+\dot{E}_{i+1} \bar{I}_{i+1}+\cdots+\dot{E}_n \bar{I}_n\)
=\((\dot{E}_1-\dot{E}_i) \bar{I}_1+(\dot{E}_2-\dot{E}_i) \bar{I}_2+\cdots\) \(+(\dot{E}_{i-1}-\dot{E}_i) \bar{I}_{i-1}+(\dot{E}_{i+1}-\dot{E}_i) \bar{I}_{i+1}\)
\(+\cdots+(\dot{E}_n-\dot{E}_i) \bar{I}_n-\dot{E}_i \bar{I}_N\)
=\(\dot{V}_{1i} \bar{I}_1+\dot{V}_{2i} \bar{I}_2+\cdots+\dot{V}_{i-1,i} \bar{I}_{i-1}\) \(+\dot{V}_{i+1,i} \bar{I}_{i+1}+\cdots+\dot{V}_{ni} \bar{I}_n-\dot{E}_i \bar{I}_N\) …③'
となり、基準相相電圧と中性線電流による電力 \(-\dot{E}_i \bar{I}_N\) を測定して加えなければならない。結局n個の電力を測定する必要があり、n個の電力計を用いて、各相相電圧と各相電流でn相の電力を測定して足し合わせる手間と同じになる。
二電力計法
三相平衡回路である第1図について、③式を用い複素電力 \(\dot{K}\) を求めると、
\(\dot{K}=P+jQ=\dot{E}_a \bar{I}_a+\dot{E}_b \bar{I}_b+\dot{E}_c \bar{I}_c\) = \(-\dot{E}_a (\bar{I}_b+\bar{I}_c)+\dot{E}_b \bar{I}_b+\dot{E}_c \bar{I}_c\)
=\((\dot{E}_b-\dot{E}_a)\bar{I}_b+(\dot{E}_c-\dot{E}_a)\bar{I}_c=\dot{V}_{ba} \bar{I}_b+\dot{V}_{ca} \bar{I}_c\) …④
負荷の力率角をθ(遅れ)とした場合、Vba=Vca=V、Ib=Ic=I として、
\(\dot{K}=V_{ba} e^{-j150°}\times I_b e^{j(120°+\theta)}\) \(+V_{ca} e^{j150°}\times I_c e^{-j(120°-\theta)}\)
= \(V_{ba} I_b e^{-j(30°-\theta)}+V_{ca} I_c e^{j(30°+\theta)}\) = \(VI\{e^{-j(30°-\theta)}+e^{j(30°+\theta)}\}\)
= \(VI\{\cos(30°-\theta)-j\sin(30°-\theta)+\cos(30°+\theta)+j\sin(30°+\theta)\}\)
= \(VI(2\cos30°\cos\theta+2j\cos30°\sin\theta)\) = \(\sqrt{3}VI(\cos\theta+j\sin\theta)\) …⑤
この⑤式により、有効電力P 及び無効電力Q は、
P=√3 VI cosθ=3EI cosθ [W] …⑥
Q=√3 VI sinθ=3EI sinθ [var] …⑦
この複素電力は、不平衡回路についても求めることができる。
複素電力 \(\dot{K}=P+jQ\) を計算することで有効電力P及び無効電力Qを求めることができるが、ブロンデルの定理は、このうち有効電力Pの測定(⑥式)に関するものであり、三相回路の場合のこの測定法を二電力計法と呼んでいる。
一方、有効電力を測定するアナログ式などの電力計を用いて直接⑦式により無効電力を測定することはできない。ただし、三相平衡回路については、次項に示すように、二電力計法を応用して無効電力の測定が可能である。
二電力計法を応用した無効電力測定
三相平衡回路において、二電力計法を応用して無効電力を測定する方法を示す。
三相平衡回路である第1図において2台の電力計の測定電力は、
W1=√3 EI cos(30°−θ) [W]
W2=√3 EI cos(30°+θ) [W]
であるから、W'=W1−W2=√3 EI cos(30°−θ)−√3 EI cos(30°+θ)=√3 EI sinθ [var]
∴Q=√3 (W1−W2) [var] …⑧
となり、電力計2台の指示値より無効電力を計算で求めることができる。
ただし、不平衡回路では Ia=Ib=Ic=I とはならず、⑧式は成立しなくなり、無効電力の測定はできなくなる。この例を【例題1】に示す。
二電力計法を応用した力率計算
三相平衡回路における力率は、二電力計法により、P=W1+W2 、Q=√3(W1−W2) となるから、
\(\cos\theta=\frac{1}{\sqrt{1+\tan^2\theta}}=\frac{1}{\sqrt{1+(Q/P)^2}}\) = \(\frac{1}{\sqrt{1+\left(\frac{\sqrt{3}(W_1-W_2)}{W_1+W_2}\right)^2}}\) = \(\frac{W_1+W_2}{2\sqrt{W_1^2+W_2^2-W_1 W_2}}\) …⑨
で表すことができる。
一電力計法(平衡回路)
三相平衡回路の場合には、一電力計法が適用できる。
第4図に一電力計法による有効電力の測定法を示す。電力計の測定値は W=EI cosθ 、従って三相電力は P=3W となる。
第5図に無効電力の測定法、第6図にベクトル図を示す。Vbc=V、Ia=I として、電力計の測定値は Wq=Vbc Ia cos(90°−θ)=VI sinθ 、従って三相無効電力は Q=√3 Wq となる。
第4図
第5図
第6図
「二電力計法」適用上の留意点
(1)二電力計法の応用
二電力計法の応用として、第7図に示すように、一つの電力計を用い、相を切り換えて三相電力を測定する方法がある。第8図に平衡回路である場合のベクトル図を示す。それぞれの電力計の測定値は、Vab=Vac=V、Ia=I として、
W2=Vac Ia cos(30°−θ)=VI cos(30°−θ)=√3 EI cos(30°−θ)
したがって、三相電力は、
P=W1+W2
で表すことができる。
第7図
第8図
ところが、この測定方法を三相不平衡回路に適用しても三相電力は測定できない。
すなわち、複素電力を計算し、第7図での測定電力を求めると、
\(\dot{K}=P+jQ=\dot{V}_{ab} \bar{I}_a+\dot{V}_{ac} \bar{I}_a\) = \((\dot{E}_a-\dot{E}_b)\bar{I}_a+(\dot{E}_a-\dot{E}_c)\bar{I}_a\)
= \(2\dot{E}_a \bar{I}_a-\dot{E}_b \bar{I}_a-\dot{E}_c \bar{I}_a\) = \(3\dot{E}_a \bar{I}_a-(\dot{E}_a+\dot{E}_b+\dot{E}_c)\bar{I}_a\)
したがって、負荷が平衡の場合には \(\dot{E}_a+\dot{E}_b+\dot{E}_c=0\) なので、\(\dot{K}=P+jQ=3\dot{E}_a \bar{I}_a\) となるが、負荷が不平衡の場合には、各相の電力は同じではないから、2台の電力計の合計は三相電力の値を表すことにはならない。この例を【例題2】に示す。
(2)配線誤接続または相順acbの場合
三相平衡回路において、配線誤接続や相順acbの場合の二電力計法での電力測定については、関連講座(理論)「三相交流回路1~対称三相交流の相順~」で解説している。
配線誤接続の場合には、相順abcのまま2相が逆に接続される状態なので、平衡回路の場合には、2相の記号を読み替えるだけで、2台の電力計の測定電力は、誤接続前と同じ大きさになる。不平衡の場合には、負荷のインピーダンスが2相で逆になってしまうので、負荷側中性点電位が変わってしまい、2台の電力計の測定電力は、誤接続前と大きさが違ってくるが、合計の電力は、誤接続前と同じ大きさになる。一方、無効電力は、平衡、不平衡ともに、⑧式は成立しない。この例を【例題3】に示す。
相順がacbの場合でも、ブロンデルの定理は適用できる。電源が相順abcからacbに変わった場合には、平衡回路であっても相順abcに対してベクトル図の構成が変わり、2台の電力計の測定電力も変わるが、合計の電力は同じ大きさになる。不平衡回路の場合には、相順abcに対して負荷側中性点電位が変わるので、2台の電力計の測定電力の大きさが違ってくるが、合計の電力は、同じ大きさになる。一方、無効電力は、平衡、不平衡ともに、⑧式は成立しない。この例を【例題4】に示す。
例題
【例題1】
第9図に示すような三相不平衡誘導負荷回路において、二電力計法を用いた三相電力を求めよ。
【解答】
この問題は、ミルマンの定理を適用し負荷側の中性点の電位を求め、それを考慮して各相の電流を求めることができる。負荷側中性点電位 \(\dot{E}_n\) は、題意より、
\(\dot{E}_n=\frac{\frac{100e^{j0°}}{2e^{j30°}}+\frac{100e^{-j120°}}{5e^{j30°}}+\frac{100e^{j120°}}{10e^{j30°}}}{\frac{1}{2e^{j30°}}+\frac{1}{5e^{j30°}}+\frac{1}{10e^{j30°}}}=\frac{50e^{-j30°}+20e^{-j150°}+10e^{j90°}}{0.8e^{-j30°}}\)
= \(62.5+25e^{-j120°}+12.5e^{j120°}\)
= \(62.5+(-12.5-j21.65)+(-6.25+j10.83)\)
= \(43.75-j10.82\approx 45.1e^{-j13.9°}\) [V]
第9図
したがって、各相電流は、
\(\dot{I}_a=\frac{\dot{E}_a-\dot{E}_n}{Z_a}=\frac{100e^{j0°}-(43.75-j10.82)}{2e^{j30°}}\)
= \(\frac{56.25+j10.82}{2e^{j30°}}=\frac{57.28e^{j10.89°}}{2e^{j30°}}\fallingdotseq 28.6e^{-j19.1°}\) [A]
\(\dot{I}_b=\frac{\dot{E}_b-\dot{E}_n}{Z_b}=\frac{100e^{-j120°}-(43.75-j10.82)}{5e^{j30°}}\fallingdotseq 24.1e^{-j171°}\) [A]
\(\dot{I}_c=\frac{\dot{E}_c-\dot{E}_n}{Z_c}=\frac{100e^{j120°}-(43.75-j10.82)}{10e^{j30°}}\fallingdotseq 13.5e^{j104°}\) [A]
となる。最初に、負荷に供給される複素電力を計算すると、\(\dot{V}_{ba}=100\sqrt{3} e^{-j150°}\)、\(\dot{V}_{ca}=100\sqrt{3} e^{j150°}\) であるから、
\(\dot{K}=P+jQ=\dot{V}_{ba} \bar{I}_b+\dot{V}_{ca} \bar{I}_c\)
= \(100\sqrt{3} e^{-j150°}\times 24.1e^{j171°}+100\sqrt{3} e^{j150°}\times 13.5e^{-j104°}\)
= \(4174e^{j21°}+2338e^{j46°}\)
= \(3897+j1496+1624+j1682\fallingdotseq 5520+j3180\)
となる(第10図参照)。
ここで、第9図での2台の電力計の測定電力は、
W1=Vba Ib cos(−150°+171°)=100√3×24.1×cos21°≒3897 [W]
W2=Vca Ic cos(150°−104°)=100√3×13.5×cos46°≒1624 [W]
したがって、有効電力は、P=W1+W2=3897+1624≒5520 [W] となる。この値は、複素電力の計算値と同じである。
一方、無効電力は、Q=√3(W1−W2)=√3(3897−1624)≒3940 [var] となるが、複素電力の虚数の値とは異なり、正しい無効電力の値になっていないことが解る。
第10図
【例題2】
【例題1】の回路において、第11図に示す2台の電力計の接続方法(電力計の電圧コイルと電流コイルを共に接続する相を、2台の電力計の共通相(a相)にしている:第7図に相当)による三相電力を求めよ。
【解答】
負荷側中性点電位および各相電流は、
\(\dot{E}_n=45.1e^{-j13.9°}\)
\(\dot{I}_a=28.6e^{-j19.1°}\)
\(\dot{I}_b=24.1e^{-j171°}\)
\(\dot{I}_c=13.5e^{j104°}\)
第11図
第12図
電力計の測定電力は、\(\dot{V}_{ab}=100\sqrt{3} e^{j30°}\)、\(\dot{V}_{ac}=100\sqrt{3} e^{-j30°}\) であるから、第12図を参照し、
W1=Vab Ia cos(30°+19.1°)=100√3×28.6×cos49.1°≒3243 [W]
W2=Vac Ia cos(−30°+19.1°)=100√3×28.6×cos(−10.9°)≒4864 [W]
したがって、有効電力は、P=W1+W2=3243+4864≒8100 [W]
となる。この値は、複素電力の計算値とは異なり、三相電力が正しく測定できていないことが解る。ただし、第7図、第8図で示したように、三相平衡回路の場合には2台の電力計で三相電力を測定することができる。
【例題3】
【例題1】の回路において、第13図に示すように、配線誤接続(第9図に対し誤接続によりb、c相が入れ替わっている。ただし、電源は相順abcのまま。)の場合の測定電力を求めよ。
【解答】
負荷側中性点電位および各相電流は、
\(\dot{E}_n=45.1e^{j13.9°}\)
第13図
第14図
\(\dot{I}_a=28.6e^{-j40.9°}\)
\(\dot{I}_b=13.5e^{-j164°}\)
\(\dot{I}_c=24.1e^{j111°}\)
電力計の測定電力は、\(\dot{V}_{ca}=100\sqrt{3} e^{j150°}\)、\(\dot{V}_{ba}=100\sqrt{3} e^{-j150°}\) であるから、第14図を参照し、
W1=Vca Ic cos(150°−111°)=100√3×24.1×cos39°≒3244 [W]
W2=Vba Ib cos(−150°+164°)=100√3×13.5×cos14°≒2269 [W]
したがって、有効電力は、P=W1+W2≒5510 [W]となる。この値は、丸め誤差も考慮すると、複素電力の計算値と同じであると言える。ただし、測定電力W1 とW2の値は、【例題1】の場合とは相違する。
一方、無効電力は、Q=√3(W1−W2)≒1690 [var] となるが、複素電力の計算値とは異なり、正しい無効電力の値になっていないことが解る。
【例題4】
【例題1】の回路において、第15図に示すように、電源が相順acbの場合の測定電力を求めよ。
【解答】
負荷側中性点電位および各相電流は、
\(\dot{E}_n=45.1e^{j13.9°}\)
\(\dot{I}_a=28.6e^{-j40.9°}\)
\(\dot{I}_b=24.1e^{j111°}\)
\(\dot{I}_c=13.5e^{-j164°}\)
電力計の測定電力は、\(\dot{V}_{ba}=100\sqrt{3} e^{j150°}\)、\(\dot{V}_{ca}=100\sqrt{3} e^{-j150°}\) であるから、第16図を参照し、
W1=Vba Ib cos(150°−111°)=100√3×24.1×cos39°≒3244 [W]
W2=Vca Ic cos(−150°+164°)=100√3×13.5×cos14°≒2269 [W]
したがって、有効電力は、P=W1+W2≒5510 [W]となる。この値は、丸め誤差も考慮すると、複素電力の計算値と同じであると言える。また、ベクトル図は【例題3】とは相違するが、測定電力W1 とW2は同じ値になる。ただし、このW1 とW2の値は【例題1】とは相違する。
一方、無効電力は、Q=√3 (W1−W2)≒1690 [var] となるが、複素電力の計算とは異なり、正しい無効電力の値になっていないことが解る。
第15図
第16図

