このページにおける、サイト内の位置情報は以下です。


社団法人日本電気技術者協会 電気技術解説講座 文字サイズ変更ヘルプ
Presented by Electric Engineer's Association
照明用語の定義と照度計算 天野技術士事務所 天野 尚

照明を考えるうえでのキーワード、放射束、光束[lm(ルーメン)]、光度[cd(カンデラ)]、照度[lx(ルクス)またはlm/㎡]、輝度[cd/㎡]、光束発散度[lm/㎡]など用語の定義について簡潔に解説するとともに、照明の計算について解説する。
※テキスト中の図はクリックすると大きく表示されます

01.放射束と測光量

1.1 放射束

 放射とは、エネルギーが電磁波として空間に放出される現象です。電磁波のなかで、波長が380〜780nmの範囲の放射は、人の目に入ったとき光として明るさを感じさせます。このように目に見える光を可視光線と呼びます。
 放射束は、ある面を単位時間に通過する放射エネルギーの量であり、その単位はワット[W]です。この放射束は人の目に無関係な物理量です。

1.2 光束[lm(ルーメン)]

 測光量である光の量は、可視光線を目の感度のフィルタ(視感度)を通して見た量で、このフィルタの特性曲線 formula34 formula34 は第1図のように表されます。これは、国際的に取り決められたものでCIE標準比視感度と呼ばれ、波長555nmの黄緑の光に対して最大感度を1とし、同等のエネルギーをもつ他の電磁波の明るさ感を比較値(相対値)で表しています。
 光束 formula34 formula34 は、上記の比視感度 formula34 formula34 を用いて次式で表されます。
formula37
formula37
 ここに、光束 formula34 formula34 の単位:ルーメン[lm]、 formula34 formula34 :分光放射束(波長 formula34 formula34 における放射束の単位波長幅当りのパワー)[W/nm]、 formula34 formula34 :波長[nm]、 formula34 formula34 :視感度が最大になる波長における放射束と光束の換算係数で683 lm/Wです。
 このように、光束は人の目という計測器を通して放射束を測った量であり、以下の測光量の基本です。

1.3 光度[cd(カンデラ)]

 ある方向の単位立体角内に発散される光束、すなわち、光束の立体角密度を光度といい、単位はカンデラ[cd]です。
 光度を formula34 formula34 [cd]、光束を formula34 formula34 [lm]、立体角を formula34 formula34 [sr]とすれば、光度 formula34 formula34 は次のように表されます。
formula37
formula37

1.4 照度[lx(ルクス)またはlm/m2]

 光源によって照らされている場所の明るさの程度を表し、ある面に入射する光束をその面の面積で割った値です。
 ある面Pへの入射光束 formula34 formula34 、入射面積を formula34 formula34 とすれば照度 formula34 formula34
formula37
formula37
です。

1.5 輝度[cd/m2]

 光っている面や照らされている面の明るさを表す量が輝度です。光源や被照面からの光度を、その方向へ見掛けの面積で割った値です。すなわち、光度の面積密度であり、第4図のように輝度 formula34 formula34formula34 formula34 方向の光度 formula34 formula34 [cd]をその方向から見た見掛けの面積 formula34 formula34 で割った値で表されます。
formula37
formula37
 蛍光ランプは、広い面積から光が出ているため輝度が低いですが、白熱電球は面積が非常に小さいフィラメントから光が出ているために輝度が高いです。

1.6 光束発散度[lm/m2]

  発光面(反射面、透過面を含む)の微小面積 formula34 formula34 を通りそこから発散する光束を formula34 formula34 とするとき光束発散度 formula34 formula34
formula37
formula37
です。
  反射面、透過面の光束発散度は、反射率 formula34 formula34 、透過率 formula34 formula34 と照度 formula34 formula34 との間に次の関係があります。
formula37
formula37
 また、どの方向から見ても輝度が等しい表面を完全拡散といいます。完全拡散では、輝度 formula34 formula34 と次の関係があります。
formula37
formula37


02.照明計算

2.1光源の配光

 光源、照明器具から出る光(光度)の空間的分布を配光と呼び、等光度の点の連なりからなる曲線を配光曲線と呼びます。配光曲線は、配光を平面的に表現し照明器具の特性を表すことが多く、照明計算の基本資料として使われます。
 第6図に代表的な光源形状における垂直角(formula34formula34)方向の光度 34.gif 34.gif と鉛直配光曲線および全光束を示します。

2.2 全光束の計算

 ここで、円筒状光源を例としての全光束を求めます。
 (2)式より formula35 formula35 で、第6図より鉛直方向の光度は formula36 formula36 です。また、立体角 formula37 formula37 は第7図の着色部に相当し、 formula38 formula38 となります。そこで、
formula39
formula39
 故に全光束は
formula40
formula40
 他の光源についても同様に計算することができます。


03.直接照度計算

3.1 点光源

 直接照度とは、光源から直接に被照面に入射する照度です。点光源LによるP点の照度を逆二乗の法則と入射角余弦の法則を用いて計算します。

1)逆二乗の法則

 第8図のように点光源Aのある方向の光度が formula41 formula41 のとき、距離 formula42 formula42 の光に垂直な面上P点の照度 formula43 formula43
formula44
formula44
となり、これを距離の逆二乗の法則といいます。

2)入射角の余弦法則

 第9図のように、被照面Gに対する光の方向APが法線PNと formula45 formula45 の角度を持つとき、被照面G上P点の照度 formula46 formula46
formula47
formula47
となります。ここに formula48 formula48 は光の方向に垂直な面G’上P点の照度です。
  このように、ある面上の照度は光の入射角 formula49 formula49 の余弦に比例し、これを入射角の余弦法則といいます。

3)点光源による照度

 第10図のように、被照面上高さformula50 formula50 に点光源Lがある場合、光源直下の点Qから水平方向に formula51 formula51 だけ離れた点Pの照度は、逆二乗の法則、入射角の余弦法則により求められます。光の方向に垂直な面の照度を法線照度 formula52 formula52 、水平面の照度を水平面照度 formula53 formula53 、鉛直面の照度を鉛直面照度 formula54 formula54 といいます。これらの照度は、光源LからPへ向かう光度を formula55 formula55 として、
 逆二乗の法則より
formula56
formula56
 入射角の余弦法則より
formula57
formula57
 入射角の余弦法則より
formula58
formula58
となります。

3.2 面光源による直接照度

 ここで取り扱う面光源は輝度が一様で、完全拡散性のものとします。

1)基本式

 第11図のように、光源面 formula59 formula59 の微小部分 formula60 formula60 の輝度を formula61 formula61 とし、面 formula62 formula62 の法線と被照点Pと formula63 formula63 を結ぶ直線の角を formula64 formula64 、Pと formula65 formula65 を結ぶ直線と点Pにおける法線との角を formula66 formula66 、Pと formula67 formula67 間の距離を formula68 formula68 とすると、面光源 formula69 formula69 による点Pの照度 formula70 formula70
formula71
formula71
となります。

2)立体角投射法

 第12図において、被照点Pを頂点として面光源 formula72 formula72 を底とする錐体が、点Pを中心とする半径1の半球から切り取る面積を formula73 formula73 、さらに formula74 formula74 の被照面上への正射影を formula75 formula75 とすると、点Pの照度 formula76 formula76 は(15)式を参照して
formula77
formula77
で求めることができます。これを立体角投射の法則といいます。
 やや分かり難い法則なので、例題を準備しました。昭和63年電験2種の応用部門で出題されたものです。
 「直径80[cm] の円形マンホールがある。その上面は、空の光だけを受けて、20,000[lx]の照度になっている。このマンホールのふたを取ったときマンホールの中で、路面より60[cm]下方にある中心点の水平面照度を求めよ。」
 マンホールと点Pの関係は第13図のように描けます。
 マンホールは、透過率100%の円形窓と考えられるので、その窓の部分の照度は光束発散度に等しく、(7)式の関係より
formula78
formula78
です。立体角投射法を使って
formula79.gif
formula79.gif
となります。

3)多角形光源による直接照度(境界積分法)

 第14図に示すような輝度が一様な多角形光源による水平面照度は、境界積分法を用いて算出します。
 輝度 formula80 formula80 の多角形光源によるP点の照度 formula81 formula81
formula082
formula082
で表され、辺の数だけの項を加え合わせることによって照度が得られます。
 ただし、 formula83 formula83 は各辺が点Pに対して張る角度、 formula84 formula84 は各辺と点Pで出来る三角形と被照面との角度です。

4)長方形光源による直接照度

 多角形光源の例として第15図に示すような、輝度が一様な長方形光源によるP点の照度を計算します。
 辺ABに対する△APBは被照面に直交(formula85formula85 )する三角形なので formula86 formula86 、同じく辺DAに対する△DPAも被照面に直交(formula87formula87 )する三角形なので formula88 formula88 となり、照度の式に項として出てきません。
 辺BCに対しては、 formula90 formula90formula91 formula91 となり、また辺CDに対しては、 formula92 formula92formula93 formula93 です。
 したがって、点Pの水平面照度 formula94 formula94 は(19)式により
formula95
formula95
となります。
参考文献
  1. 照明ハンドブック 照明学会編 (株)オーム社
  2. 光技術と照明設計 池田紘一・小原章男 編著 電気学会 (株)オーム社