照明の光源についての用語、(1)全光束、(2)効率(ランプ効率と総合効率)、(3)演色性[Ra(アールエー)について解説するとともに、光源ランプの種類(1)白熱電球、(2)蛍光ランプ、(3)高輝度放電ランプ(HIDランプ) (4)低圧ナトリウムランプについて解説する。
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(1)全光束
光源から全空間に発散する光束[lm]です。「照明の基礎」で計算式により説明しましたので参照してください。
(2)効率(ランプ効率と総合効率)
ランプ効率と総合効率があります。
ランプ効率は、全光束とランプで消費される電力との比で、単位は[lm/W]です。総合効率は、蛍光ランプ、HIDランプなど安定器を使用するランプで、安定器の消費電力を含めた効率を示します。
第1表に主な光源についてのランプ効率と総合効率の数値例を記しました。
(3)演色性[Ra(アールエー)]
人工光源に照らされるときと、昼光に照らされているときとでは、物体の色彩の見え方が異なります。このように、光源の特性によって色彩の見え方が変わる性質を演色性といい、数値
[Ra(アールエー)]で表現します。第1表に各光源の平均演色評価数を示しました。Raが80以上あれば一般に色の見え方で支障は生じないレベルといわれます。
(1)白熱電球
フィラメントに電流を流すことによる熱放射発光を利用した光源です。低効率、短寿命ですが、演色性が良く、点灯装置や安定器が不要、安価です。
1)一般照明用電球
第1図に示す構造で、タングステンフィラメントを使用します。フィラメントの蒸発を抑えるために、バルブ内に窒素とアルゴンの混合ガスを封入します。
2)ハロゲン電球
封入ガスとして不活性ガスの他に微量のハロゲン物質(よう素、臭素)を加えた電球で第2図に外観を例示します。ハロゲンサイクルを利用して黒化による光束減少を防止し、フィラメントを高温化・長寿化しています。
ハロゲンサイクルとは、バルブ壁付近でフィラメントから蒸発したタングステンとハロゲンが反応しハロゲン化タングステンとなり、これが対流でフィラメント付近に返って、熱で乖離して再びタングステンに戻る作用で、第3図に反応の様子を図示しました。
ハロゲンサイクルを効果的に行うにはバルブ壁の温度を約200℃と高くする必要があるため、電球の形状は小型で、バルブの材料には石英ガラスを用います。
(2)蛍光ランプ
代表的な低圧放電ランプで、低圧水銀蒸気中のアーク放電で発生する紫外線が放電管内壁に塗った蛍光体を励起して発光します。第4図に直管形の構造を示します。その他に環形、コンパクト形(U形、角形、電球形など)の様々な形状のものが作られています。
ラピッドスタート(即時点灯)形、Hf(高周波点灯専用)形などの点灯回路を必要としますが、コンパクト形、電球形などはランプと安定器を一体にして直接電源に接続できるようになっています。
(3)高輝度放電ランプ(High Intensity Dischargeランプ)
HIDランプは、高圧放電における金属蒸気の発光を利用した光源です。蛍光ランプのような低圧放電の光源に比べて小型で、大電力、高出力(高光束)が得られます。長寿命なので、屋外、道路、工場、大規模店舗などの大規模空間に用いられます。
1)水銀ランプ(高圧水銀ランプ)
水銀放電の圧力を数気圧にすると、近紫外域や可視域に強い発光スペクトルが現れ,
これを利用したのが水銀ランプです。
水銀ランプの構造は第5図に示すように発光管と外管で構成されます。石英製の発光管に微量の水銀とアルゴンを封入して、まずアルゴンを放電させて始動し、その熱で徐々に水銀を気化して高圧力の水銀放電となります。放電が安定するまでに数分間かかり、いったんランプを消灯すると、発光管の温度が常温近くまでに下がらないと再始動できません。
ランプの外管は硬質ガラス製で、外管内部には窒素が封入されます。
発光が青と緑だけなので平均演色評価数Raは20以下と低いです。
2)メタルハライドランプ
水銀ランプの効率や演色性を向上させるために、発光管内に種々の金属のハロゲン化合物を添加したものです。添加する金属の種類を選択することで、光源効率が100 lm/W以上のものや、Raが90以上のものが出来ています。ランプの構造は基本的に水銀ランプと同じですが、金属ハロゲン化物の蒸気圧を高めて強い光を得るために、発光管の温度が水銀ランプより高温になるようにしています。
3)高圧ナトリウムランプ
ナトリウムの発光は基本的には、波長589nm放射(D線)が主体ですが(一般形)、ナトリウム蒸気の圧力が高くなるとスペクトルの幅が広がって、緑や赤の領域までの発光となり、黄白色の効率の高い光源になります(高効率形)。圧力を更に高めると演色性も向上します(高演色形)。
ナトリウムの蒸気は活性が高く石英を腐食するので、高圧ナトリウムランプの発光管には透光性のアルミナ管を使用し、内部にナトリウムの水銀アマルガムが封入されます。ランプの構造は水銀ランプやメタルハライドランプとほぼ同じ二重管形式です。
(4)低圧ナトリウムランプ
低圧ナトリウムの発光を利用したもので、発光がほぼD線の単色光だけなので、光源効率は高いですが、演色性は非常に悪く色の判別が出来ません。しかし、その反面、物体のコントラストがはっきりするので、霧の多い地域の道路や、トンネルの照明用に用いられます。第6図に低圧ナトリウムランプの構造を示します。
(1)放電ランプの安定化と始動
アーク放電を利用した蛍光ランプやHIDランプには点灯装置が必要です。
放電ランプの電圧・電流特性は電流が増加するとランプの電圧が低下する負特性です。このような特性のランプを電源に直接接続すると電流が無制限に流れてランプを破壊してしまうので、電流を制限するような電気回路素子をランプと直列に接続してランプ電流を安定化します。この電流制限回路を安定器と呼びます。
また、放電を開始させるために放電気体を電離させる必要があり、そのためのスタータ機能も必要になります。
一般的な安定器は誘導リアクタンス(チョークコイル)であり、ランプ放電電圧が電源電圧よりも高いときには電流制限特性を持った磁気漏れ変圧器を用います。
(2)蛍光ランプの点灯回路
1)基本的な回路
蛍光ランプは予熱の電極を持った放電ランプで、電極を予熱して熱電子を発生させておき、瞬時的に高い電圧をかけて放電を開始させます。第7図はスタータ形点灯回路で、まず、電極を直列にして、安定器(チョークコイル)を通して予熱し、数秒後に約数百Vの電圧を発生して放電が開始し点灯します。スタータにはグロー放電とバイメタル電極を組み合わせたグロースタータが広く用いられます。
2)インバータ回路(電子安定器)
高周波交流(例えば40〜50kHz)で放電ランプを点灯すると、光源の効率が向上し、発光のちらつき(フリッカ)もなくなります。
第8図に高周波点灯回路の原理図を示します。
始動コンデンサは、フィラメントの予熱電流を流し、蛍光ランプの両端に高電圧を発生してランプを始動する働きをします。チョークコイルでランプ電流を制限するという動作は第7図と同じです。
チョークコイルのインダクタンス値を周波数に逆比例して小さく出来るので、コイルの形状が小さくなり点灯回路全体を小型化できます。
実際の回路では、高周波発生用として、整流回路コンデンサ及び力率調整回路、スイッチングトランジスタとそれの制御回路が組み込まれます。
(3)HIDランプの点灯回路
1)水銀ランプの点灯回路
第9図は水銀ランプの基本的な点灯回路です。図のように、一方の電極Bに接近して始動のための補助電極Cが設けてあり、まずこれらの電極の間で局部放電が起こり、電離が進行して主電極A-B間の放電に移行します。安定器としてはチョークコイル形か磁気漏れ変圧器形が用いられます。
2)メタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプの点灯
基本的に水銀ランプと同じですが、メタルハライドランプはハロゲン化金属の添加のために、また、高圧ナトリウムランプはナトリウムが気化しにくいため始動電圧が高くおのおの専用の安定器が使われていました。しかし、最近では始動装置(パルス発生装置)がランプに内蔵されるようになり、水銀ランプの安定器で点灯できるようになっています。
参考文献
- ライティングハンドブック 照明学会 オーム社
- 新照明教室 光源 1999 照明学会編
- 新版エネルギー管理技術(電気管理編) 第2版 1994 (財)省エネルギーセンター
- インバータとはなにか? 神谷 文夫 電気学会誌 第87巻第12号 平成15年
- TOSHIBA ランプ総合カタログ